つれづれ

「ニシカワさんとはもう散歩に行きません！！」

（えー…と、解説すると
「ニシカワさん」とは、タミオさんのあこがれのヒトのコトで
「散歩」はいわゆるデートのコトです。）

どうして？

「だって意味ないじゃないですか？」

…意味？
あんなに楽しそうに出かけて行ってたじゃない？

「散歩は楽しいですよ！」

…楽しいなら、それで良いじゃない？

「そんなの何の意味があるんですか！！」

…（だぁかぁらぁ…）楽しいだけじゃダメなの？

「だって！わたしはニシカワさんと何の関係もないんですよ？」

…関係？ない？

「わたしはニシカワさんと同じ仕事もしてないし、
友だちでもないんですよぉ？
わたしはいったいニシカワさんの
何なんだっつうコトですよぉおお！？」

（ははぁん…）

「この前ニシカワさんの弟子のコがニシカワさんに怒られて
トイレで泣いてたんですよ…
わたしだってニシカワさんに怒られて
トイレで泣いてみたいんですよぉおおお！！」

…ああ、そう…トイレで泣いてみたいんだ…。

（やっと分かってきました…。
つまり、同僚でもない、友だちでも恋人とも呼べない、
今の曖昧なニシカワさんとの関係に不安になっているという
乙女心のようです。
それにしても極端な行動に出たものです。）

「でも、メールでもう会わないって送ったのに
”ああ、仕事が忙しくなっちゃったのか。
じゃあタミオさんの仕事が片づくまでガマンします。”
とか、返事が来て全然伝わってないんですよぉ…！
どこまでボンヤリしてんだって感じです！！」

いやぁ…たぶんタミオさんのメールは
フツウに意味不明だと思うなぁ…。

「あ…ちょっと待ってください。」

携帯に着信があったようです。

（…なんかタミオさん、携帯の画面を見ながら
不気味な薄ら笑いを浮かべています。
こういう時のメールの相手は決まってニシカワさんと
相場が決まってるんですが…）

「…むぉおう、お腹がへったって…しょうぉがないですねえぇー…」

（デレデレの笑顔です…やはりメールの主はニシカワさんでした。
ニシカワさんの詰めている会社はウチの会社の近くです。）

「でも、食事とか行ってる余裕ないですよねぇ～？」

（…もう面倒くさいんで”会わないんじゃ？”とかツッコミません。）

…まあ、追い込み中とはいえ、１・２時間ぐらいなら
飯食うくらいは大丈夫じゃない？
それで気分転換出来て仕事の効率が上がれば
その方がいいでしょ。

（しょうがない…親心というヤツです。）

「そうですかぁ～…そうですよねぇ～…
１時間ぐらいだったら大丈夫ですよねぇ～？」

（その媚びるような笑顔はやめなさい…気持ち悪いから。）

ああ…でも２時間で帰ってこ…

「行ってきまあぁ～～～～～す♡♡♡」

（行っちゃったよ…聞いちゃいねぇ…）




…結局、４時間帰って来やがりませんでした…

タミオさんはそういうヤツです。